今治で活躍している人にインタビュー
大三島大山祇神社の参道でクラフトビールの製造販売をしている高橋さんご夫妻を訪ねた。高橋享平さんは松山市出身で、東京藝術大学音楽学部を卒業されている。全く違う分野なのになぜブリュワリーを?
もともとビール好きで海外のビールや地ビール、クラフトビールなど普段からいろんなビールを飲んでいたがそんな中で大阪の箕面ビールのおいしさがきわだっていたと高橋さんは語る。
当時、箕面ビールは家族経営の小規模醸造ながらも、すでに多くの受賞歴があった。ある日イベントで箕面ビールが出店しているところに出会う。これは好機!!すぐにお願いしてアルバイトをさせてもらうことにした。大学院に在学中だったが、休学してまで箕面ビールで仕事がしたかったという。
休学したものの箕面ビールの社長がやはり卒業はしておきなさいと…。大阪と東京を行き来してなんとか卒業だけはすることができた。2年間アルバイトをしたのち晴れて正社員となる。そして同じ大学だった尚子さんと結婚。なんと尚子さんまでも箕面ビールに就職。家族経営の少人数だからこそ、製造だけでなく営業や販売、事務作業など色々な経験を積むことができ、またビールメーカーの仕事を一貫することがさらなるやりがいにもつながっていた。社員みんなが同じ目標に向かっている時、自ら進んで仕事に取り組む。そう考えると本当の働き方改革というのは、仕事の満足度をあげることだと考えさせられる。そのころは、独立など考えてはいなくてずっと箕面ビールで働くつもりだった。
忙しい日々の中、尚子さんは仕事と家庭と両方をしなければならず、ずっとこの生活を続けることに疑問を持つようになった。そんな時、尚子さんから田舎で暮らしたいという提案があった。それでも高橋さんはビールを造り続けたかったという。クラフトビールの会社に入ることも考えられないこともなかったが、どうせなら自分での開業を視野に入れて移住する場所を探すことに。
第一候補は屋久島だった。自然が豊かですばらいい環境だが、電力の供給が不安定なところと雨が多いことがネックになった。尚子さんの実家のある富山という選択もなくはなかったが、やはり温暖なところがいいということで最終大三島になるのだが…。
やはり地元愛媛に戻ろう!もともと山よりも海の方が好きだったこともあり、しまなみ海道の島で探すことに。まずは住んでからと大三島の市営住宅に引っ越し、アルバイトをしながら物件探しをすることにした。大三島の自然豊かな環境、すばらしい風景。そしてここには多くの若い人たちが県内外から来て農業をしたりカフェを運営している。そんな人たちの交流があり、島全体が活気にあふれている。
本当は海の見える場所をと思っていたがなかなかいい物件がなかった。しかしよく考えてみると、一番おいしい状態のビールをここで飲んで帰ってもらいたいお店なので車を運転して来るとだれか一人は飲むことができない。ならば近くに宿泊施設などがある大山祇神社の近くがよいのでは?ちょうど参道にはいくつか空き物件があり、今の場所を購入することができた。
箕面ビールにいた経験からやはり設備はきちんとしたものにしたくてかなりな投資をした。古い民家を改装し設備を整えた。そしていよいよ2018年5月に開店の運びとなった。1年目の夏場は大盛況で多くのお客様が訪れた。
持ち帰りもしているがやはり店で飲むのが一番おいしい。瓶入りを販売すれば、飛躍的に売り上げは上がるだろうことは想像できる。しかし、瓶詰めをするにはさらに大きな投資が必要になり、売れればさらに設備を広げ生産量をあげる。そうしていくという選択もあるが、それは違うように思うと高橋さんは言う。自分たちが目指す最終形はそういうこではなく島のゆっくりとした時間の中で本当においしいビールを作り、お客さんに喜んでいただくことだと言い切る。
大三島ブリュワリー合同会社
愛媛県今治市大三島町宮浦
常時4種類のビールを作っていておおよそ1か月ごとに替わる。お店で飲める他テイクアウトもできるがやはりお店で飲むのが一番おいしい。おつまみのベーコンや鴨ロースなども絶品!ペットボトルなど容器を持ってくると量り売り可能。
2019年2月現在のビール